商品紹介

富山の春の質感
特集Special Reports

富山の祭り

人が生み出す一体感に魅せられて。

少し、風に冷たさが残る3月。
宵にまぎれてお囃子の音が聞こえてくる。
若い衆の練習が始まった。
まだ少しぎこちなく、息が続かぬ笛の音と
後押しするように力強く響く、ベテランの太鼓。
祭りの日をとびきりの笑顔にするために、老いも若きも一つになる。
たった一日。されど一日。

祭りの前夜。御神像が、町にお見えになる。今年の「山宿」に選ばれた家が、心づくしの調度品で、おもてなし。

さあ、本祭の始まり。庵唄の典雅な調べとともに、豪華絢爛な曳山が、風情ある町なみをめぐる。

繊細な城端塗、精巧な井波彫刻。伝統の職人技の粋を尽くした曳山は、年に一度の今日この日こそ、目を見はるほど美しい。

History富山の祭りにかかわる歴史

富山の祭りは四季折々、五穀豊穣や大漁祈願、商売繁盛、祖先崇拝などさまざまな形態のものが継承されています。出し物も、曳山や行灯、獅子舞に武者行列など色とりどり。
2016年12月には、世界の伝統文化などを保護するユネスコ無形文化遺産に全国33の祭り「山・鉾(ほこ)・屋台行事」が登録され、富山県からは「高岡御車山祭(みくるまやままつり)の御車山行事」「城端神明宮祭の曳山(ひきやま)行事」「魚津のタテモン行事」の3行事が認められました。

富山は全国的にも曳山が密に分布している地域のひとつで、大きく花形山と屋台人形型、子供歌舞伎型に分類することができます。その中で、春に行われる花形山の代表「高岡御車山祭」と屋台人形型の代表「城端神明宮祭の曳山行事」をご紹介します。
(参考:富山県教育委員会「とやまの祭り」)

高岡御車山祭

毎年5月1日に行われる、前田利長を祀る高岡関野神社の春季例大祭。1609年、前田利長が高岡城を築くにあたり町民に与えた御車山を、関野神社の祭礼日に神の巡行に伴って奉曳したのが始まりと言われています。その特徴はなんといっても、山町が保有する豪華絢爛な7基の山車です。金工、漆工、染織など高岡職人の優れた伝統技術と、高岡商人の心意気がつまった華麗なもの。
土蔵造りの家が建ち並ぶ風情ある町並みを、重厚感あふれる車輪のきしむ音や優雅なお囃子とともに巡行するその光景は、タイムスリップしたかのような不思議な感覚に陥ります。

各御車山には総勢50人の男衆が付き従い、山車の上に乗れるのは各山町の小学6年生までの男子のみ。山車の上から友人たちを眺める、何とも言えない優越感を味わいます。また山の曳き手やお囃子を担当するのは、山町の人ではなく周辺地域に住む人々。花傘を飾る赤・白・黄の三色の菊花をつくるのは女性の仕事で、公民館やお寺に集まり世間話をしながら一つひとつ丁寧に手作りします。こうして古くから、山町町民のみならず周辺地域の人々にも支えられ、400年以上もの間、大切に受け継がれてきました。
2013年より、その伝統と技術を次世代へ伝えるため、「平成の御車山」を5カ年かけて制作しています。

城端神明宮祭の曳山行事

城端神明宮の春の例大祭として毎年5月4日・5日に行われ、獅子舞や剱鉾、傘鉾に続き6つの町の庵屋台と御神像をのせた山車が町中を練り歩きます。古い神迎え行列の形式を残しており、300年以上も続く貴重なお祭りです。越中の小京都と呼ばれている城端は、江戸時代より加賀絹の産地として栄えてきました。絹織物で得られた財力を土台に、曳山祭は発展をとげてきたのです。

城端曳山祭の最大の特徴は、江戸時代に庵唄(いおりうた)を取り入れたこと。京都祇園の一力茶屋などを模した精巧な「庵屋台」が山車を先導し、その中で三味線・篠笛・太鼓の囃子に合わせて、江戸端唄の流れをくむ城端独特の「庵唄」を披露します。
数十曲ある庵唄は各町ごとに毎年選び替えるため、6カ町の若連中は、正月の寒稽古、4月の本稽古と練習を重ね本番を迎えます。また、各町それぞれの師匠のもと稽古をするため、同じ庵唄であっても、全く異なる表情の唄声が楽しめるのも魅力のひとつです。

曳山の豪華さもまた目を見張るものばかり。
井波彫刻による傑作揃いの彫刻と伝統の城端塗や金箔が施された山車には、漁業や商業の守護神「恵比須様」や三国志きっての人気武将「関羽」などが飾ってあります。城端別院善徳寺の建築に携わった大工や塗師ら職人の技術が定着していたからこそ作ることができたものです。

魚津のタテモン行事

ユネスコ無形文化遺産に登録されたもう一つのお祭り「魚津のタテモン行事」は8月の第一金・土曜日に、魚津市諏訪町にある諏訪神社にて行われます。航海の安全や豊漁祈願などを目的に、多くの贄(にえ)を神前に奉った「たてまつるものの祭り」が「たてもん祭り」へ転化したとも言われており、7基のたてもんが威勢よく曳き廻されるその姿は、見る者に豪快、勇壮な印象を与え、漁師たちの心意気を存分に感じることができます。
舟に見立てたソリ形の台の中央に、高さ約15~16mの柱を立て、約80~90個の提灯とぼんぼりを帆のように飾り付けたもので、国内でも類例のない構造です。
1基を動かすには、担ぎ手が30~40人、引き手が50人ほどで、総勢100人近い人数が必要なため、毎年ボランティアを募集して、県内外問わず様々な人が協力して行う参加型のお祭りです。

Spot富山の祭りにかかわる場所

祭を支える人々の心意気に触れる 高岡御車山会館

「高岡御車山祭」の御車山を通年で観覧できるミュージアム。祭の準備から祭礼当日を追体験できる4Kの高精細画質でみる「シアター」など、様々な観点から祭を紐解くことで、高岡の人々の祭にかける熱い想いに触れることができます。

一目見ればその美しさに心奪われる 城端曳山会館

城端曳山祭の曳山や庵屋台、傘鉾などが常時展示されています。館内は数分ごとに照明が切り替わり、提灯で彩る夜の姿も見ることができます。庵唄を耳にしながら、曳山祭を擬似体験しませんか。

富山の春の質感