五箇山、八尾、蛭谷の三産地で
原材料から紙漉き、加工まで
職人の手仕事で丁寧につくられる「越中和紙」。
一つひとつ異なる風合いや、優しく温かい手触りから
先人たちの想いがつまった
さまざまな和紙の、それぞれの物語を感じることができます。
History越中和紙にかかわる歴史
南砺市の五箇山和紙、富山市の八尾和紙(やつおわし)、下新川郡朝日町の蛭谷紙(びるだんがみ)。越中和紙とはこれらの和紙を総称したもので、昭和59年に国の伝統的工芸品に指定されました。楮(こうぞ)紙や染紙のほか、近年では若い後継者が生み出す新しい工芸和紙や和紙加工品にも注目が集まっています。
五箇山和紙
東中江和紙加工生産組合、農事組合法人五箇山和紙、一般財団法人五箇山和紙の里の3つの団体が製造を行っています。五箇山は深い山間にあり、冬は建物の一階が雪に埋もれるほどの豪雪地帯。そんな厳しい自然環境にも耐え得る強さが五箇山和紙の特徴です。
「1,000年経っても墨の色も紙の色も変わらない」といわれるほど、保存性、耐久性に優れているのは、昔ながらの技術・技法でつくる和紙にこだわりがあるから。例えば、楮の“雪さらし”。白い和紙をつくるため、雪の上に楮を広げ、天然の紫外線で楮の色素を漂白します。冬のわずかな晴れ間をぬって、1週間ほどの地道な作業。それでも薬品をつかわないのは、繊維が劣化し和紙が変色することを防ぐため。こうしてできた、強くて優美な五箇山和紙は、桂離宮や国指定重要文化財の古文書の修復などにも使用されています。
八尾和紙
もともと加工用の紙として製造された八尾和紙。江戸時代に富山藩から全国に出向いた「越中富山の薬売り」の薬包紙や袋紙、帳簿などに使われたことからも丈夫さがうかがえます。
「桂樹舎」は、八尾和紙の伝統を引き継ぐ唯一軒の製造元。特徴である型染の和紙は、着物や帯を染めるのと同じ手法で作られます。その誕生には、染色家・芹沢銈介氏との出会いがありました。戦後の布が手に入りにくい時代、布に代わる丈夫で水に溶けない和紙を探していた芹沢氏との出会いによって強さに磨きがかかり、さらに美しさが加わったのです。中まで染料が染み込んで折り目が白くならない型染の和紙は、まさに加工にうってつけ。時間がたっても色褪せず、使うほどに柔らかく手に馴染む和紙とともに、デザイン性の高い多彩な和紙小物が生まれています。
蛭谷紙
770年頃、近江国(滋賀県)より伝えられ、大正から昭和初期にかけて全盛期を迎えた「蛭谷紙」。
障子紙などの生活道具として使用されていたため、和紙産業の衰退とともに後継者が続かない厳しい状況にありました。2003年、和紙作家・川原隆邦氏が集落にただ一軒残っていた漉元、越中和紙伝統工芸士・米丘寅吉氏のもとに飛び込み、口伝で和紙づくりを教わります。楮と糊の原料であるトロロアオイを自家栽培し、丁寧に漉きあげた和紙は優れた耐久性にくわえ、愛情のこもった柔らかく温かいもの。消えそうな伝統の技を復活させようという、若手のチャレンジに期待が寄せられています。
Spot越中和紙にかかわる場所
世界遺産 相倉合掌造り「五箇山和紙漉き体験館」
江戸時代より加賀藩の和紙産地として発展してきた南砺市五箇山。どこか懐かしい田園風景のなかで、400年以上の歴史をもつ和紙づくりを体験してみませんか。旅の思い出とともに、手漉き和紙が生み出す、人の温かみや伝統の重みを、きっと感じることができるはず。
※11月末〜4月末は冬季休業とさせていただきます。
詳しいお問い合わせは、農事組合法人五箇山和紙
(TEL:0763-66-2016)まで
和紙をより身近に感じる「桂樹舎和紙文庫(紙の工芸館)」
現在、唯一八尾和紙の生産を行っている製造元。紙漉き体験施設に加え、紙の発展過程や世界各地の和紙紹介、和紙に繋がる文献などの展示も行っています。館内には桂樹舎の和紙やおしゃれな和紙雑貨の売店、喫茶店も併設しています。
Products越中和紙の商品紹介
五箇山和紙 ちんちろ
楮の天然繊維を丁寧に手漉き、スクリーン印刷で色付けして仕上げた市松模様のカードケースです。一点一点にこんにゃく糊を塗り込み、手揉み加工を施しているため、強度があり、使い込むほどに手に柔らかく馴染んでいきます。
桂樹舎 はがき箱・文庫箱
お気に入りのポストカード入れやパソコン周りの小物入れなど、様々な使い道のあるはがき箱と文庫箱です。表面には揉んでいない型染紙を使用し、スッキリと仕上げた美しい柄はインテリアのポイントにもなります。